「万能細胞」選抜に成功 京大再生研、再生医療に期待

6月7日9時19分配信 京都新聞

体細胞由来の万能細胞「iPS細胞」を作成する過程。マウスの体の細胞に4種類の転写因子の遺伝子をウイルスで導入する
 遺伝子操作でマウスの体細胞から、さまざまな臓器や組織になる可能性がある万能細胞「iPS細胞(人工万能幹細胞)」を作成する際、ES細胞(胚(はい)性幹細胞)と同様の高い分化能力を持つ細胞を選抜する方法を、京都大再生医科学研究所の山中伸弥教授らのグループが開発し、英科学誌「ネイチャー」で7日発表した。iPS細胞がES細胞と同様に再生医療に利用できる可能性がさらに高まり、研究が世界的に激化しそうだ。
 山中教授らは昨年、4種類の転写因子で特定の遺伝子を働かせると、体細胞がES細胞のような分化、増殖能力を持つことを見つけ、iPS細胞の作成に世界で初めて成功した。しかし、作成段階でiPS細胞を選び取る際、分化能力が低い細胞も含まれるため、ES細胞と同じように利用することは難しいとみられていた。今回、選別する時に指標にしていた遺伝子を別の遺伝子に変更したところ、高い分化能力を持つ細胞だけを残せることができた。選別した細胞は、生殖細胞にも分化することを確認した。
 ES細胞は、受精卵を使うので倫理上の問題があり、他人の細胞からつくるため、将来臓器の作成などが可能になっても、移植で起こる拒絶反応を減らすことが課題だ。iPS細胞は自分の体細胞から臓器や組織をつくることができるので課題をほぼ解決できると考えられ、今回の技術改良によって、移植医療などへの応用に大きく前進したことになる。
 山中教授は「安全面で解決が必要な課題はあるが、次は人間のiPS細胞を作成したい。人間でも成功すれば、将来の再生医療への応用が期待できる」と話している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070607-00000003-kyt-l26